・総会準備とは管理課題解決のプロセスだ
・役員は管理のプロである・プロになるべき
・「管理で買え」の「管理」とは
総会準備とは管理課題解決のプロセスだ
やはり3月期末の物件が多く、春は総会準備の季節だ。どんな物件もなにがしか課題はあるもので、総会準備こそ解決の絶好の機会とひとがんばりのタイミングだ。何しろ、管理会社が提案してくる総会資料は自分たちの委託内容の説明に過ぎない。一番重要な事業計画にも委託事業が書かれているだけで、理事会の意思を尋ねてくることはほぼ経験にない。管理会社の提案資料においては、唯一、事実を表した会計部分に着目し、課題分析から取り掛かろう。
①管理費会計(一般会計)収支
過去分も含め、収支のトレンドを確認する。赤字決算は言うまでもなく、剰余金の増減をしっかり把握しよう。無駄な支出を確認する。特に漫然と契約更新している保守料などコスト対効果の確認行おう。管理契約とて例外ではない。リース契約も買い取りに切り替えるなど必然性含め要チェックだ。
②修繕費会計収支
積立額の推移と長計との整合度合を確認する。また、単年度の修繕費用で管理費会計に計上された事案のチェックも怠りなく。設備の修繕など定期的に行われるものは修繕会計に組み入れ、長計の精度を上げよう。次期に予定されている修繕事案ももちろん要不要を確認し予算化しよう。
③課題抽出
上記より課題を抽出する。そして継続中の課題と共に優先順位を付けて、来期の事業計画を構想しよう。概ね、次のような領域であろう。
・管理費会計の改善と日常管理に関わる苦情などの対策
・修繕会計の改善
・理事会の改革
ここで、目論むべきは戦略的なアプローチである。管理組合員とのコミュニケーションを意図的に進めていくのである。次項に事例を示す。当ブログで取り上げている理事会の構造問題と総会資料のあり方を一気に解決しようとする良案だ。
理事会の改革。管理のプロを育成する
何よりも長期的に重要なことは理事会の改革で、仕事ができるプロ集団に変えていかねば、上記の総会資料作成プロセスも実行できない。役員に報酬を付け、事業にも報酬を付け、仕事化することが唯一の解決策だ。以下、この考えを実際に企てた事案の役員募集告知だ。上記プロセスを経て設定した解決策を事業案化し、そこへ報酬を付ける募集告知である。
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<役員募集>
拝啓 ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。
平素は管理組合業務に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、本物件もxx期を迎え、喫緊の修繕事案が増加する中で、財政の健全性を確保するため、以下の支出の削減に取り組んで参りました。
・管理員勤務形態の見直し等による効果と支出の最適化
・大規模修繕工事の理事会直接発注による特別修繕会計支出削減(約x千万円削減)
これらにより、ひとまず積立金増額改定を回避した次第です。
一方で理事会の業務は、これまでの管理会社提案の評価・合意から
、工事や委託業務の企画・見積・評価や、直発注による施工業者の管理監督、など質・量ともに増大しています。
この業務負担に報いるために業務報酬制を導入いたします。
それは本投資物件の管理組合員(所有者全員)が、物件維持の自治活動に公平に関わることでもあります。
まずは間近に迫る大規模修繕工事に適用しますが、40期に向けては、各種配管の更新工事など大型の改修工事が必須であり
、自主事業化による財政面への最適化が避けられません。
所有者が長期に収益を得る前提である物件維持とその費用の抑制、そのための自治活動へ所有者全員が応分の負担を負うことにご理解を頂けますようお願い申し上げます。
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「管理で買え」の「管理」とは
こうして、総会資料に至る役員募集の段階で、来期取り組む課題解決とその事業化を目論み、構想を明確にし、役員募集にてアナウンスするのだ。理事会の意図の管理組合員への前振りにもなるし、こうして集めた役員の質にも期待できる。
これら事業に必要な予算は、役員報酬も含めて予算化する。これこそが総会資料の骨子であり、総会当日の論点なのだ。これは事業経営と基本的に同じ仕組みなのである。辛抱強くこれを繰り返せば、自ずと理事会から管理組合の意識が変わり、それが物件価値を高めることは言うまでもない。
「マンションは管理で買え」の「管理」とは、管理会社でも保有する資産でもなく、理事会と理事長のことを指す。プロ理事集団であれば、自ずと良いパートナーを選ぶし、無駄な資産も持たず、物件に適した十分な管理策が見通せるのである。
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