・総会で委託契約継続議案が否決。問題管理会社の委託費値上げの顛末
・まずは問題点の深堀りから
・新たなパートナー探しへ評価の視点
・マンションという未熟で欠陥だらけの住システム
管理委託継続議案否決! 問題管理会社の委託費値上げの顛末
過去5年にわたり管理を任せた大手管理会社T社、総会の議案づくりに際して、昨今の人件費上昇を背景に大幅な管理委託費値上げを提示してきた。理事長としてその場での低減交渉は避け、即議案化を了解、ひと月後の総会審議に諮ることにした。管理組合員の判断に委ねる意図だ。
T社管理の5年はこのマンションにとって悲劇の歴史を刻んだ。
・日常管理の荒っぽさで居住者からの不満は絶えることなく・・・
・3年ほど前より漏水事故が多発・・・
・漏水対策は場当たり的処置・・・
・改修工事提案の工費の異常な高さ・・・
・大規模修繕工事においては元請の立場を押し通し、総工費の20%(!)の元請料相当を提示する傲慢さ・・・
さて総会当日、日曜の昼下がりとあって出席者も議決権者の四分の一程度、でも委任と合わせれば過半数になる状況だ。本件議案審議となり、理事長として淡々と出席者の判断へ客観的に出来事を列挙し、採決。結果は賛成ゼロで否決となった。5年間の評価の観点からは当たり前の顛末だろう。理事長としては以前より長期的パートナーにはなり得ないと見限っていた。
管理員や清掃員、フロントは人依存だから当り外れはあろう。懸念するのは会社の体質だ。修繕提案とそのコスト構造、物件状態の理解力、などすべては管理会社の持つプロセスの産物(企業は人とプロセスでできている)であり、会社の体質が透けて見えてくる。その観点で、T社は存在意義が疑われどころか、否定されるべき企業と訝しく感じていた。一方では大手電鉄会社の下、買収を繰り返し、中小の管理会社を吸収して図体を大きくしている事業展開には、消費者としてなんとも暗澹とさせられる。マンション管理業界の理念や自己規制の低さにマンション所有者は自衛を図らねばならないことを再認識する事案であった。
管理会社を変える際は問題点の深堀から始めよう
管理会社変更へ、まずは問題点の深堀から評価指標を具体化しよう。変更から稼働に向けての工程、つまり、見積ー議案化ー審議ー契約ー運用、と一貫した指標で推進すればブレなく最短で稼働に向かうことができる。
この否決ケースでは以下だ;
・日常管理の荒っぽさで居住者からの不満は絶えることなく・・・管理の質向上の仕組みは無いの?
・3年ほど前より漏水事故が多発・・・修繕計画能力の欠如は専門家や知見の蓄積不足?取組み意識の低さ?
・改修工事提案の工費の異常な高さ・・・管理会社の囲い込み意識と協力会社含むコスト構造はどうなの?
・大規模修繕工事においては元請の立場を押し通し、総工費の20%(!)の元請料相当を提示する傲慢さ・・・管理会社の元請価格を知らずに契約していた!
「この否決ケース」と事例紹介として始めた本稿であるが、上記はかなり一般的かつ普遍的な課題で、どこの管理組合も経験済みではないだろうか。
評価指標はこれだ
これまでの課題展開をさらに深め、管理会社の事業の仕組みの粒まで落とし込もう。前述の通り、企業は「人とプロセス」からできている。企業の仕組みレベルをチェックするポイントをセットするのだ。
・日常管理の荒っぽさで居住者からの不満は絶えることなく・・・日常管理の質の低さと問題対応の鈍さ
→フロント一人当たりの担当戸数をチェック
→改善の仕組み化をチェック。フロントを支えるバックオフィス機能をチェック
・3年ほど前より漏水事故が多発・・・修繕計画能力の欠如と個々の修繕への取組みの甘さ
→物件診断スキルを裏打ちする組織構成をチェック
・改修工事提案の工費の異常な高さ・・・管理会社の囲い込み意識とコスト構造、協力会社の規模と元請構造
→建設会社兼業か管理サービス専業か、大型修繕時に取りたい立場をチェック(元請、コンサル、紹介他支援、など)
・大規模修繕工事においては元請の立場を押し通し、総工費の20%(!)の元請料相当を提示する傲慢さ・・・ゼネコン系管理会社の元請コスト構造
→建設会社兼業の場合の元請%をチェック
これら企業としての「人とプロセス」事にまで落とし込み、選定時にチェックするのである。プレゼンの場か、もしくは見積仕様書に組み込んで確認しよう。選定後も起こるであろう管理品質問題は、起きたことと事前確認したプロセスの両面で説明を求めることができる。
最終的に議案書に掲載した比較表を以下に示す。
自衛は自営マインド。プロ理事になろう
様々な経験から私の結論は、マンション管理は自主管理がベストだということだ。何も自治会を作って住人自ら草むしりをしようと言っているのではない。管理組合が各分野ごとのサービス業者に委託し自分たちに必要な環境を守っていくのだ。そうすれば管理委託というブラックボックスから解放される。マンション管理サービスという業界がどのように形成されてきたのかその歴史を踏まえればこの意をくみ取ってもらえるだろう。以下の記事を読んでほしい。
https://gendai.media/articles/-/125668?imp=0
自主管理から始まったマンション管理の歴史は、マンションデベロッパーが分譲後のアフタービジネスに気づき、分譲と管理をセットで売り始めた経緯だ。分譲時に物件価格だけでなく、管理費修繕費その支払先までセットされる。つまり居住者の生涯住コストをデベロッパーグループが決めるというなんとも僭越な商品を売る業界なのだ。一方で規制は緩く、一言でいえばやり放題な業界である。私が「マンションという住システムは戸建てに比べて未熟であり欠陥だらけ」と思う一因がこれだ。業界自主規制も法規制も発展途上だ。企業の利益目標がパッケージで押し付けられ、物件ごとに見れば競争原理が働かない。購入したなら一度このパッケージを解体し、自主管理に戻そう。
本来は業務委託なのだから、管理会社を「使う」意識と知識が前提であるが、自主管理から始めれば、管理組合は業務を管理会社に委託する構造が自ずとセットされる。その次の知識武装へのネタ収集は本サイトや紹介しているサイト他、すでに無数にある。そう、管理会社を「使う」意識の方が先に育たねばならないのだ。しかしながら現実は、若い物件、つまり若い管理組合は、苦悩を経験した管理組合の次元に至らず、同じ過ち繰り返す。何故なら、デベロッパーは分譲時に理事会を公平という大義の下に輪番制とした規約や提案を押し付けるからだ。意識醸成の芽がそもそも摘まれているのだ(多分意図的)。そして皆、一回目の大規模修繕を迎え、かすかな違和感を感じ始めるのである。ここに至るに15年以上の時間が経過してしまう。
委託という意図があれば、管理会社提供のサービスを選択的に買えばよいのだ。例えば収納代行や基幹事務だけ委託するなど現実的な解だ。事は人の一生を左右するコアインフラの住システムなのに、規制当局がこれを放置する現状が解せないのは私だけではないだろう。生きる知恵として「プロ理事」意識の醸成は喫緊の課題だ。
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