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賃借人の安否確認

・安否確認コールあり

・緊急連絡先へのコンタクト

・債権者会議

・居室立入りへの道筋

・退去へ

 

すわ、賃借人の安否確認コールあり

賃借人への安否確認があった。仕事関係者からで、昨年夏を最後にもう半年連絡がつかないという。電話は解約され、メール返信も無いとのこと。「やはり」と予期していた事態への展開に驚きよりも具体的なアクションへと考えが巡る。一昨年より家賃が滞納気味で、ほぼ毎月保証会社へ請求を繰り返していたからだ。家賃の減額や、低額物件の紹介など、できる範囲の支援をしてきたが・・・果たして最悪の顛末か・・・

改めて賃貸借契約書を確認する。契約時とは違い、この非常事態に講ずべき手立てへ食い入るように見つめる自分がいた。しかし、緊急連絡先へ連絡を取る以外の手立ては見つからなかった。

警察立会手配

緊急連絡先のご親族の携帯へショートメッセージを発信しレスを待つ。無視されることもあり得る。親族とはいえ、厄介ごとに関わりたくないと思うのが人情だ。その際は単独での開錠入室となる。その展開への備えに所轄の警察へ立会依頼をする。しかし無碍なる返事、予約は出来ない、と言われてしまう。警察立会は現場対応策でしかないのだ。

ここで、ご親族から謝罪のレス入る。賃借人と連絡が取れているということでまずは一安心。 

仕事関係者との面談

仕事関係者から緊急連絡先の共有を求められた。しかし賃貸借契約書の事項であり、かつ、個人情報でもあるので、ご親族の了解を取ってから、とまずはお断りした。一方で彼らの持つであろう債権やいきさつなどを知りたいと思った。「賃貸経営とはチャレンジする人への応援」とミッションを定義している当方にとって、促さねばならない円滑な退去へ、転居含む生活再建の可能性は大いなる関心事だからだ。

面談は容易に実現し、賃借人を取り巻く全体像が判った。それは、債務、信用、能力など、今後の社会的な対応シナリオを想定するに必要な情報である。当然ながら現在の賃料を払える状態ではなく、いままでの業界での再起とは別に生活再建へ、確実な収入を得る仕事に就くこと、妥当な賃貸物件への転居、が必須な状況である。世間から途絶し、引きこもっている場合ではない。健康上の問題が無いのなら「働け」が道理だ。

 一旦、当方がコミュニケーションのハブとなり、今後の進め方をシナリオと共に共有し、まずは関係者を鎮静化させた。 

開錠入室へ

ご親族が賃借人を訪ねることとなり、結果を知らせてほしい旨お伝えした。が、半年も世間から連絡を絶つ当人が親族来訪に応えるのか疑問だった。夜、灯りも点かず一刻の猶予もないと感じる中、このチャンスを逃してはならない。管理人室で待機し、応答なければ、正体を明かし賃貸人として開錠入室することとした。賃貸人単独では法的にも難しいが、親族の立ち合いなら許容される。

いよいよその時が来た。エントランスのインタホンが何度も鳴るが応答が無い。少し間をおいて管理人室の小窓がノックされる。応対すると、居室の鍵を開けてくれないか、との依頼だった。間違いなくその親族だった。想定通りの展開に一瞬戸惑うも、賃貸人であることを名乗った。

居室立入りには法的手続きと警察立会が必要だが、親族の依頼、かつ、人道的観点から開錠する旨をお伝えし、二人で居室へ向かう。ドアをノックし、名前を呼ぶも応答が無い。鍵を開ける。以前自宅に使用していた時のシリンダーの重厚なメカアクションが指先に蘇る。

ドアを開けると人感センサーライトが灯る。まず嗅覚に集中する。匂いは無い。親族が名前を呼びながら部屋の奥へと駆け込む。数秒後、玄関に控えていた私へ「無事でした」と一言、緊張が解けた様子で発した。私も大いに安堵しドアを閉めた。

ご本人との面談

管理人室に戻り、今後の対応を考えていたところ、お二人で訪ねてきた。中に招き入れ、まずは健康状態を尋ねた。やつれた感じではあったが顔には生気があり、応答もしっかりされていた。さらに背景など少し会話して、人生浮き沈みはあるよね、の軽い世間話感を醸し、明るい表情を取り戻されたところでその日の会話は打ち切った。滞納解消や退去、信用回復、さらには再起への具体策など、暗闇から脱したばかりの心情を察すると生々しく重たすぎる話題だからだ。

契約解除と退去へ

賃貸借契約には保証会社が絡んでいる。賃借人の滞納は賃貸人ではなく、即、保証会社への負債となる構造だ。一方で賃貸人も管理費修繕費税金と日々コストが発生している。今の状態は双方出血状態であるとして、後日、一日でも早い退去と契約解除を申し入れた。無収入状態のご本人の債務抑制と信用回復のためだ。肩を押すための具体案として、身の回りの物は車で運ぶので退去の形を取り、残置物処理は事後対応、を提示したところ了承された。一旦親族の下へ身を寄せた彼の再起を祈るのみだ。

賃貸人としては一件落着、残置物の処理などまだまだ仕事は残されているが、最悪の状況からの処理作業とは違い、気持ちは前向きで明るい。

 

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