・第三者管理移行後の大規模修繕提案に驚愕
・「組合意思」を放棄させられてしまう管理会社による第三者管理の是非は誰が問うべきか
第三者管理移行後の大規模修繕工事提案に驚愕
読者からお尋ねがあった。管理会社管理(第三者管理)に移行したマンションの大規模修繕工事の価格妥当性について疑問があるとのこと。その見積額は積立金に対してほぼ倍で、高いものを買わされようとしていないか、の危惧だ。特に内訳中の一般管理費への疑問が大きいようである。
筆者の事例比較を提供した。筆者自ら苦しめられた大手管理会社元請よりも単価で高い。直発注の責任施工例比較では倍以上だ。つまり、組合が施工業者と直委託契約を結べば積立金残高で修繕できる選択肢がある状況だ。
組合意思を放棄させられてしまう管理方式の是非はだれが問うべきか
管理会社元請によるメリットは否定しない、が、借金をしてまで買うべきサービスか、は組合意思として判断すべきだ。幾度も述べた通り、大型工事についてはまず工事委託の方式自体から秤にかけるステップを持つべきなのだ。しかし、第三者管理の問題点はその選択肢をも失ってしまうことだ。保全は管理者(管理会社)が担う、との規約が組合意思を阻害する。
規約改定までさせられた管理移行は不可逆に近い。理事会不要との甘言に「騙された」との読者の悲鳴が痛ましい。企業としての囲い込み策は解るが、不可逆性を埋め込もうとする規約改定まで行うことにその良心が問われるべきだ。問うべきは一体だれなのか、消費者であるならば情報武装しか手立てがない。この業界の意図的とも思える情報格差ビジネスに呆れるばかりだ。「騙された」との言葉に問題点のすべてが集約されている。契約だけならクーリングオフの救済制度があるが、規約改定を伴う移行は如何ともしがたい。
参考:筆者本件回答(一部削除)
「結論から申し上げますと、問題点はご質問の各見積項目でなく、修繕工事の企画自体とお見受けしました。根拠としては直近事例との比較です。30戸前後の小規模物件でマンション理事会が直接発注した事例となりますが、税別で1400万円~2000万円ほどで大規模修繕工事を完工しています。
修繕企画が所有者にとって不利になる原因は、管理会社への丸投げによるコスト増と競争原理の無効化です。さらに「第三者管理方式」であるならば、所有者の企画への関与はさらに減少してしまいます。
管理会社が第三者管理方式を請け負うことの問題点は、マンション管理者が発注者であり受注者である利益相反構図にあることで、国交省も懸念を表明しています。突っ込みどころは見積項目よりはこの利益相反の観点でしょう。
貴マンションにとっての最重要問題は、本件負債に加えて、この工事実績が次回の大規模修繕工事費へ長期修繕計画上に計上されることです。所有者は次の15年で負債と合わせて計7千万円程度を目標に修繕費用を積み立てねばならないことになるでしょう。15年後の築30年以前には火災報知設備やインターホン等電気設備も更新期を迎え、さらに築40年には給排水設備の更新期となりますので計画上の修繕費はさらに増額され、それは即、明日からの修繕積立額に跳ね返ります。
所有者はこの問題を共有して一度立ち止まるタイミングと思います。
XX社はマンション管理業界において、第三者管理方式を標ぼう・推進している業者です。
所有者にとっては理事会活動など不要になる反面、住インフラ管理を民間企業一社に任せてしまうリスクを負います。そのリスクとは競争原理が薄れるコスト増であり、管理費だけでなく上記のとおり修繕積立額にも表出します。所有者はこの機会に経済的負担と管理方式のトレードオフ関係を認識し、意見を整合してみてはいかがでしょうか。」
#マンション #元請 #第三者管理 #管理会社管理 #規約改定
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