企業におけるポートフォリオマネジメントの活用状況を探ろうとする「ポートフォリオ経営番付」、今回は三井物産をはじめポートフォリオマネジメントに関する取組みが比較的定着していると思われる大手商社に焦点をあて調査した。
2016年版 番付 |
会社名 | 評価ポイント | ||||
総合ポイント (10点) |
取組み定着度 (4点) |
戦略整合度 (2点) |
ベネフィット定量度 (2点) |
体系的廃棄度 (2点) |
||
横綱 |
住友商事 | 9 | 4 | 2 |
1 |
2 |
丸紅 | 9 | 4 | 2 | 1 | 2 | |
三井物産 | 9 | 4 | 2 | 1 | 2 | |
関脇 | 三菱商事 | 6 | 2 | 1 | 1 | 2 |
前頭 | 伊藤忠商事 | 3 | 0 | 0 | 1 | 2 |
【取組み定着度】
5社中の4社が有価証券報告書に「ポートフォリオ」の記述があり、住友商事は15年以上、丸紅は14年以上、三井物産は12年と長期に渡り、ポートフォリオが複数個連続で記述されている。三菱商事は6年連続でポートフォリオの記述があるが2015年度の記述数が1個だった。尚、ポートフォリオの延べ記述数は三井物産が一番多い。この4社は有価証券報告書にポートフォリオを長年の記述していることから、企業の組織風土の中にポートフォリオ経営の取組みが定着していることがうかがえる。
下表は、有価証券報告書におけるポートフォリオ(除く、金融系と知財系)の記述数の年度別推移。
・横綱:住友商事、丸紅、三井物産
いずれも取組み定着度4点、戦略整合度2点、ベネフィット定量度1点、体系的廃棄度2点とベネフィット定量度を除きすべて満点。
住友商事は2001年度の有価証券報告書の中で「事業ポートフォリオ戦略に基づき資産の入れ替えを促進」の記述があり、2003年度には「1998年より、当社は、多様な事業ポートフォリオにおけるリスクと収益性を測る全社共通の指標としてリスクアセット及びリスク・リターンを導入し、リスクコントロールを行いながら収益基盤の拡大を図っています」の記述がある。
丸紅は2002年度の有価証券報告書の中で「業界No1のポートフォリオ・ユニットを目指す」の記述がある。
三井物産は2004年度の有価証券報告書の中で重点施策として「事業ポートフォリオの継続的な見直し」、2005年度では「2006年4月に新設したポートフォリオ委員会」の記述がある。
・関脇:三菱商事
2010年度の有価証券報告書からポートフォリオの記述がある。
・前頭:伊藤忠商事
「積極的な資産入替えによる資産の質・効率性の更なる向上」の記述があり、実質的にポートフォリオに取り組んでいることがうかがえる。
レポートの続きは添付PDFファイルをご覧ください。
詳細はBizFolioホームページのCONTACTにてお問い合わせください。
【戦略整合度】
住友商事、丸紅、三井物産の3社は、ポートフォリオを全社的に統括する常設的な組織体が有価証券報告書に記述されている。
・住友商事:戦略会議と投融資委員会
・丸紅:統合したポートフォリオ管理(統合リスク管理)
・三井物産:ポートフォリオ管理委員会
【ベネフィット定量度】
ROEを中核的な目標として掲げ定期的に監視評価している。
・住友商事:ROE9%程度
・丸紅:ROE 10%以上
・三井物産:持続的な利益成長と二桁台ROE
・三菱商事:ROE 2桁の実現を目指します
・伊藤忠商事:安定的にROE13%以上を目指します
【体系的廃棄度】
「何を行わないか」を戦略として取り入れていると認められた。
・住友商事:再編、売却、資産入替え
・丸紅:ノンコア事業から撤退
・三井物産:案件の絞込み
・三菱商事:事業の位置付けを見直し、入替を促進
・伊藤忠商事:積極的な資産入替
※本調査は金融商品取引法で規定されている開示情報である有価証券報告書を基礎として行われているため、対象会社におけるポートフォリオマネジメントに関する実態とは異なる可能性がある。